求人票に「試用期間3か月」と書かれていても、確認すべきことは期間だけではありません。
試用期間中だけ基本給や手当が下がる、雇用形態が契約社員になる、社会保険の加入時期が遅い、本採用の判断基準が分からないなど、入社後に初めて気づく条件が隠れている場合があります。
また、「試用期間中は会社が自由に解雇できる」「最初の14日間は労働法で守られない」という理解は正確ではありません。試用期間中でも労働契約は成立しており、会社が本採用を拒否するには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
本記事では、転職者が入社前に確認したい給与・雇用形態・解雇・社会保険・有給休暇の注意点と、採用担当者へ失礼なく聞く質問例を解説します。
結論|試用期間は「期間・待遇・本採用条件」を書面で確認する
試用期間がある求人では、内定を承諾する前に次の8項目を確認してください。
- 開始日と終了日:何月何日から何月何日までか
- 雇用形態:最初から正社員か、試用期間中は契約社員か
- 給与:基本給、固定残業代、試用期間後との差額
- 手当:通勤、住宅、家族、資格などの支給開始日
- 社会保険:健康保険と厚生年金の資格取得日
- 有給休暇:算定の起点と会社独自の前倒し付与
- 本採用の判断基準:何を、誰が、いつ評価するか
- 延長条件:延長の有無、最長期間、判断時期
口頭説明だけでなく、求人票、労働条件通知書、雇用契約書、就業規則を照合します。条件が違う場合は、どの書面が正式な条件なのかを確認し、メールなど記録に残る方法で回答をもらいましょう。
試用期間とは適性を確認するための期間
試用期間は、会社が採用した労働者の勤務態度、能力、適性などを見極めるために設ける期間です。3か月や6か月とする会社が多く見られますが、法律で全国一律の長さが決められているわけではありません。
ただし、試用期間だから労働契約が始まっていないわけではありません。入社して会社の指揮命令を受けて働き、賃金を受け取る以上、試用期間中も労働者です。
| 誤解しやすいこと | 実際に確認すること |
|---|---|
| 試用期間中は仮採用なので労働契約がない | 入社日から労働契約が成立している |
| 会社は理由なく本採用を断れる | 本採用拒否にも合理的な理由と相当性が必要 |
| 14日以内なら自由に解雇できる | 解雇予告の例外と、解雇理由の正当性は別問題 |
| 社会保険は本採用後に加入する | 加入要件を満たせば原則として資格取得は入社日 |
| 有給休暇の6か月は本採用日から数える | 通常は雇入れ日から継続勤務期間を数える |
試用期間の有無は書面で明示してもらう
厚生労働省は、労働契約を結ぶ際に、契約期間、就業場所、業務、労働時間、賃金、退職に関する事項などを書面等で明示するよう定めています。2024年4月からは就業場所・業務の変更範囲なども明示事項に加わりました。
試用期間そのものや、試用期間中に待遇が異なることは、後から認識違いにならないよう労働条件通知書や雇用契約書で確認してください。「詳細は入社後に説明します」で終わらせず、内定承諾の判断に必要な条件は入社前に質問して構いません。
就業規則に書かれた本採用条件も確認する
労働条件通知書に「試用期間3か月」とだけ書かれている場合でも、就業規則に本採用の判断、延長、解雇に関する規定が置かれていることがあります。
- 試用期間を延長できる条件
- 延長できる最長期間
- 本採用を見送る判断事由
- 評価する責任者
- 面談や評価通知の時期
- 試用期間中の退職手続き
内定段階で就業規則全体の提示が難しいと言われた場合は、少なくとも試用期間に関係する規定の説明を求めましょう。
給与と手当は月額ではなく内訳を比較する
試用期間中の給与が本採用後より低い求人はあります。大切なのは、総額だけでなく、何がいつから変わるのかを分解して確認することです。
| 確認項目 | 試用期間中 | 本採用後 | 確認のポイント |
|---|---|---|---|
| 基本給 | 月24万円 | 月26万円 | 自動的に上がる日と条件 |
| 固定残業代 | 3万円・20時間分 | 3万円・20時間分 | 基本給と分けて明示されているか |
| 通勤手当 | 上限2万円 | 上限2万円 | 初月から支給されるか |
| 住宅・家族手当 | 対象外 | 対象 | 支給開始日と要件 |
| 賞与算定 | 算定対象外 | 算定対象 | 初年度の見込み額への影響 |
例えば、試用期間3か月だけ月給が2万円低ければ、入社初年度の差は6万円です。さらに住宅手当が月1万円、本採用後から支給されるなら差は合計9万円になります。年収提示額に試用期間中の減額が反映されているかも確認してください。
固定残業代が含まれる求人では、基本給、固定残業代の金額、対象時間、超過分の扱いを確認します。詳しい見方は「固定残業代の求人票で確認すること」も参考にしてください。
最低賃金は試用期間中も原則として適用される
試用期間中であっても、賃金は原則として地域別最低賃金以上である必要があります。試用期間中の労働者に対する最低賃金の減額には、都道府県労働局長の許可が必要です。会社が独自に「試用期間だから最低賃金を下回ってよい」と決められるものではありません。詳しくは厚生労働省の「最低賃金の減額の特例許可申請について」で確認できます。
月給制は、対象となる賃金を1か月平均所定労働時間で割り、時間額にして比較します。通勤手当、家族手当、時間外割増賃金、賞与などは最低賃金との比較に含めないものがあるため、疑問があれば労働局や労働基準監督署へ確認しましょう。
正社員の試用期間か有期契約かを区別する
求人票の「試用期間」と、最初の数か月を契約社員として雇う「有期労働契約」は同じとは限りません。
| 形態 | 契約の見え方 | 特に確認すること |
|---|---|---|
| 正社員として入社し試用期間を設ける | 期間の定めのない労働契約+試用期間 | 本採用基準、延長条件、待遇差 |
| 契約社員として入社後に正社員登用 | 期間の定めがある労働契約 | 契約満了日、更新、登用率、登用条件 |
| 紹介予定派遣 | 派遣期間後に双方が直接雇用を判断 | 直接雇用後の雇用形態と条件 |
「試用期間6か月(契約社員)」と書かれている場合は、6か月後に自動的に正社員になるとは限りません。次の点を書面で確認してください。
- 正社員登用は自動か、審査や面接があるか
- 過去1年間の対象者数と登用者数
- 登用されなかった場合に契約が終了するか
- 契約更新の有無と判断基準
- 正社員登用後に給与や休日がどう変わるか
求人票に「正社員」と大きく書かれていても、雇用契約書が「契約期間3か月」となっていれば重要な違いです。署名前に採用担当者へ確認しましょう。
試用期間中の解雇と本採用拒否
試用期間は通常の採用後より会社に広い判断の余地が認められる場合がありますが、自由に解雇できる期間ではありません。
労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効になると定めています。試用期間中の本採用拒否でも、採用時に知ることができず、引き続き雇用することが適当でないと判断できる事情があるかなどが問題になります。
14日以内なら自由に解雇できるわけではない
労働基準法第20条は、会社が労働者を解雇する場合、原則として30日前の予告または不足日数分の解雇予告手当を求めています。同法第21条には、試用期間中の労働者について一定の例外があり、14日を超えて引き続き使用された場合は解雇予告の規定が適用されます。
ここでいう14日は、主に解雇予告に関する基準です。入社から14日以内なら、会社が理由なく解雇してよいという意味ではありません。解雇理由の合理性や相当性は別に判断されます。
本採用を見送られやすい事情
個別事情によって判断は変わりますが、一般に次のような事実が問題になることがあります。
- 経歴や資格について重大な虚偽申告があった
- 正当な理由のない遅刻・欠勤を繰り返した
- 業務上必要な指示に繰り返し従わなかった
- 指導や改善機会を設けても重大な問題が改善しなかった
- 安全や情報管理に関する重大な規則違反があった
一度の小さなミスや、十分な教育を受けていない段階で期待水準に達しなかったことだけで、直ちに本採用拒否が正当になるとは限りません。会社側の指導内容、評価基準、改善機会、配置の可能性なども関係します。
試用期間の延長は理由と期間を確認する
病気による欠勤などで評価期間が不足した場合、就業規則や個別契約に根拠があり、合理的な理由があれば試用期間が延長されることがあります。
延長を伝えられたら、次の内容を書面で確認してください。
- 延長する具体的な理由
- 新しい終了日
- 延長中の給与と手当
- 改善を求められている項目
- 本採用と判断する達成基準
- 次回面談と最終判断の日程
終了日の直前に理由が曖昧なまま延長を告げられた場合は、就業規則の根拠と評価記録を確認しましょう。
社会保険は本採用日ではなく加入要件で決まる
適用事業所で常用的に使用され、加入要件を満たす人は、試用期間中であっても健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。一般的な正社員として入社する場合、資格取得日は原則として入社日です。
日本年金機構の「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」では、事業主が資格取得届を提出する手続きを案内しています。
求人票や説明で「社会保険は試用期間終了後に加入」と言われたら、次のように確認してください。
健康保険と厚生年金の資格取得日は、入社日の認識でよろしいでしょうか。試用期間終了後からとなる場合は、その理由と試用期間中の加入先をご教示ください。
短時間労働者などは、週の所定労働時間、月額賃金、企業規模などによって加入要件が異なる場合があります。自分が対象か分からない場合は、年金事務所へ相談できます。
有給休暇は原則として雇入れ日から数える
労働基準法第39条では、雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、原則10日の年次有給休暇を与えると定めています。
正社員として入社し、最初の3か月が試用期間であっても、通常は入社日から継続勤務期間を数えます。「本採用から6か月後」ではありません。
会社によっては、入社日に数日付与する、入社月に応じて一斉付与するなど、法定基準を上回る制度を設けています。通院や家族の予定がある人は、入社直後に使える休暇制度も確認しましょう。
| 確認する制度 | 質問する内容 |
|---|---|
| 年次有給休暇 | 初回付与日、日数、試用期間を含めるか |
| 入社時特別休暇 | 入社直後に使える日数と用途 |
| 欠勤・遅刻の扱い | 無給控除、評価への影響、手続き |
| 時間単位・半日有給 | 利用できる単位と申請方法 |
筆者の体験|試用期間中は「契約社員」だと入社後に知った
実は筆者自身、過去の転職で「試用期間中の雇用形態」を確認しないまま入社した経験があります。
求人票には「正社員」「試用期間3か月」と書かれており、当然、初日から正社員として契約するものだと思っていました。ところが入社後に確認した契約内容は、試用期間中は契約社員という扱いで、正社員としての契約は試用期間が終わってからでした。
契約として違法だったわけではありません。ただ、「聞いていたつもりの条件と違う」という状態で新しい職場のスタートを切るのは、想像以上に落ち着かないものです。もし試用期間中に本採用に至らなければ「契約期間満了」として終わる可能性もあったと考えると、入社前に確認しておくべきだったと感じています。
この経験から、筆者は次の3点を内定承諾前に必ず確認するようになりました。
- 求人票の「正社員」表記だけで判断せず、試用期間中の雇用形態を質問する
- 労働条件通知書(雇用契約書)を内定承諾前にもらい、期間・給与・雇用形態を見る
- 口頭の説明で済ませず、書面またはメールで残す
次の章の質問例は、この経験を踏まえて「入社前に聞いておけばよかったこと」をそのまま質問文にしたものです。ぜひ内定承諾前に活用してください。
内定後に使える質問例
試用期間の質問は、疑っている印象を避けるために、「条件を正確に理解して入社準備をしたい」という目的を添えると聞きやすくなります。
条件をまとめて確認するメール
このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。入社後の働き方を正確に理解したうえで準備したく、試用期間について確認させてください。期間中と本採用後で、雇用形態、基本給、各種手当、社会保険、有給休暇の算定に違いがある項目をご教示いただけますでしょうか。また、本採用の判断時期と評価項目についても、差し支えない範囲でお知らせいただけますと幸いです。
本採用の実績を確認する質問
入社後の目標を具体的にしたいと考えています。過去1年間で試用期間を終えた中途入社者のうち、本採用へ移行した人数と、主に評価される項目を教えていただけますでしょうか。
人数を回答しにくい会社もあります。その場合は「原則として問題がなければ本採用となるのか」「試験や面談があるのか」「延長となる例はあるのか」を聞きましょう。
求人票と労働条件通知書が違う場合の質問
求人票では試用期間中も同条件と拝見しましたが、労働条件通知書では基本給が月2万円異なる記載になっています。正式な条件は労働条件通知書の内容でよろしいでしょうか。変更の理由と、本採用後の基本給へ切り替わる日も確認させてください。
差異を責める表現ではなく、文書名、項目、金額、日付を具体的に示すと回答を得やすくなります。条件が重要なら、納得できる回答を得てから内定承諾を判断してください。判断方法は「内定承諾で後悔しないための判断ポイント」でも解説しています。
なお、給与や試用期間と同じく、入社後のギャップになりやすいのが「休日数」です。求人票の休日欄の見方は年間休日105日・110日・120日・125日の違い|求人票の休日の見方で詳しく解説しています。
注意したい求人と会社の対応
次のような説明があった場合は、すぐに辞退すると決めつける必要はありませんが、条件を書面で確認してから判断しましょう。
- 試用期間の終了日が決まっていない
- 本採用の条件を質問しても「上司次第」としか答えない
- 求人票と雇用契約書の給与が違う
- 正社員求人なのに、契約書では有期契約になっている
- 社会保険は本採用後からと言われる
- 試用期間を何度でも延長できると説明される
- 試用期間中は残業代が出ないと言われる
- 契約書を入社日まで見せてもらえない
- 持ち帰って確認する時間を与えず署名を急かされる
大切なのは、説明の曖昧さが解消されたかです。担当者の言い間違いや書類の更新漏れであっても、訂正後の書面を受け取ってから署名しましょう。
入社後に条件の違いが分かった場合の対処
入社後に求人票や事前説明と異なる条件が分かったら、感情的に退職を申し出る前に、事実と証拠を整理します。
- 求人票、募集ページ、スカウト文面を保存する
- 内定通知書、労働条件通知書、雇用契約書を並べる
- 異なる項目、金額、日付を表にする
- 採用担当者または人事へメールで確認する
- 回答と訂正内容を記録に残す
- 解決しない場合は公的な相談窓口へ相談する
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、募集・採用、解雇、労働条件など幅広い労働問題について、無料で相談を受け付けています。夜間や休日は、厚生労働省の労働条件相談ほっとラインも利用できます。
解雇を告げられた場合は、解雇理由証明書の交付を請求できる場合があります。退職届への署名を求められても、会社都合の解雇なのか、自分からの退職なのかで扱いが変わるため、その場で急いで署名せず内容を確認してください。
試用期間の確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認できたらチェック |
|---|---|
| 試用期間の開始日と終了日 | □ |
| 正社員か有期契約か | □ |
| 基本給と固定残業代の内訳 | □ |
| 期間中に支給されない手当 | □ |
| 賞与・昇給の算定への影響 | □ |
| 健康保険・厚生年金の資格取得日 | □ |
| 有給休暇の初回付与日 | □ |
| 本採用の評価項目と判断時期 | □ |
| 延長条件と最長期間 | □ |
| 求人票と契約書の条件が一致 | □ |
| 不明点への回答をメールで保存 | □ |
すべての項目が理想どおりである必要はありません。待遇差や試用期間がある理由を理解し、自分が受け入れられる条件かを判断できる状態にすることが目的です。
試用期間についてよくある質問
試用期間中に退職できますか
試用期間中でも退職は可能です。ただし、期間の定めがない契約か有期契約か、就業規則にどのような手続きがあるかで確認点が変わります。無断欠勤で退職するのではなく、上司へ伝え、業務の引継ぎと貸与品の返却を行いましょう。
試用期間中の経歴は履歴書に書く必要がありますか
短期間でも雇用されて働いた事実は、原則として職歴として扱います。社会保険や雇用保険の記録から後で分かる可能性もあります。省略する場合も、面接で空白期間を聞かれたときに事実と異なる説明をしないことが大切です。
試用期間が6か月の会社は避けるべきですか
6か月という長さだけで避ける必要はありません。専門性の高い仕事や評価に時間がかかる職種もあります。期間中の待遇、本採用率、評価基準、延長条件が明確かを確認してください。長期間にわたり大幅な減給があり、評価基準も曖昧なら慎重な判断が必要です。
試用期間中は在職中の会社を退職しないほうがよいですか
新しい会社へ入社しながら前職に在籍し続けることは、就業規則、社会保険、勤務時間、競業避止、情報管理などの問題が生じます。通常は、内定条件を書面で確認し、入社日を確定してから前職の退職手続きを進めます。不安だからという理由で二重在籍を自己判断しないようにしてください。
まとめ|曖昧な条件を入社前に具体化する
試用期間は、会社が一方的に労働者を選別するだけの期間ではありません。転職者にとっても、仕事内容、上司の指導、職場環境、説明された労働条件が実際と合っているかを確かめる期間です。
内定承諾前には、期間、雇用形態、給与、手当、社会保険、有給休暇、本採用基準、延長条件を確認しましょう。「聞きにくいから」と曖昧なままにすると、入社後はさらに確認しにくくなります。
質問に対して具体的な回答があり、書面の条件が一致していれば、安心して入社準備を進められます。回答を避ける、書面を出さない、署名を急かす場合は、内定を受ける前に立ち止まる判断も必要です。


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