固定残業代の求人は避けるべき?【現役キャリアアドバイザーが要注意パターンと見分け方を解説】

固定残業代を含む求人の見分け方と確認ポイント 転職の基礎知識
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求人票に「月給30万円」と書かれていても、その全額が基本給とは限りません。内訳を見ると、基本給24万円と固定残業代6万円で構成されていることがあります。

固定残業代がある求人を一律に避ける必要はありません。しかし、金額だけを見て応募すると、入社後に「想像より基本給が低かった」「残業が多い職場だった」と感じる可能性があります。

大切なのは、基本給・何時間分か・超過分の支給・実際の残業時間を分けて確認することです。本記事では、求人票を比較する方法と、面接や内定後にそのまま使える質問例を紹介します。

なお、給与欄以外も含めた求人票全体の見方は「正社員の仕事探し|求人を比較する7つの確認ポイント」で解説しています。あわせて参考にしてください。

  1. 結論|固定残業代の有無だけで応募先を決めない
  2. 固定残業代とは
  3. 【アドバイザー視点】面談でよくある2つの誤解
    1. 誤解1:「月給30万円」の内訳を見ていない
    2. 誤解2:「固定残業代=ブラック」という思い込み
  4. 求人票で確認する4項目
    1. 固定残業代を除いた基本給
    2. 何時間分で、いくらか
    3. 超過分が別途支給されるか
    4. 配属予定部署の実際の残業時間
  5. 【記載例】求人票の給与欄3パターンと読み解き方
    1. パターン1|内訳が明記されている例
    2. パターン2|要注意の例
    3. パターン3|情報不足の例
  6. 「固定残業代45時間」の求人は避けるべきか
  7. むしろ社員に有利なケースもある
  8. 応募前・面接で使える質問例
    1. 給与の内訳を確認する
    2. 実際の残業時間を確認する
    3. 超過分の支払いを確認する
    4. 固定時間を設定した理由を確認する
  9. 質問したときの企業の反応にも注目する
  10. 内定後は求人票と労働条件通知書を照合する
  11. 固定残業代の求人を判断する比較表
  12. 説明と実態が違うときの対応
  13. 筆者の体験談|求人票と面接で確認して感じたこと
    1. 面接で内訳を質問したら、曖昧な反応をされた
    2. 求人票より残業が長く、超過分は支払われなかった
    3. 今は「固定残業代つき」の記載をまず確認している
  14. よくある質問
    1. 固定残業代がある求人は違法ですか?
    2. 残業がゼロでも固定残業代は支給されますか?
    3. 固定残業代が高ければ得ですか?
  15. 応募前のチェックリスト
  16. 【無料特典】月給分解シート(Excel)を配布します
  17. まとめ|月給を分解してから判断する
  18. 参考資料

結論|固定残業代の有無だけで応募先を決めない

固定残業代が含まれる求人は、次の4項目が確認できれば比較しやすくなります。

  1. 固定残業代を除いた基本給
  2. 固定残業代が何時間分で、いくらか
  3. 対象時間を超えた場合の追加支給
  4. 配属予定部署の実際の残業時間

4項目のうち一つでも分からない場合は、応募をやめる前に確認します。質問に対して具体的な回答が得られるかどうかも、会社を判断する材料です。

固定残業代とは

固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働などに対する割増賃金として、定額で支払われる賃金です。「みなし残業代」「定額残業手当」などと表記される場合もあります。

厚生労働省は、求人で固定残業代を定額支給する場合、次の内容を求職者に明示する必要があると案内しています。

  • 固定残業代の計算方法となる時間数と金額
  • 固定残業代を除いた基本給
  • 設定時間を超えた分の割増賃金を追加で支払うこと

つまり「固定残業代があるから、何時間残業しても追加の残業代は出ない」という仕組みではありません。実際の割増賃金が固定残業代を上回る場合は、差額の支払いが必要です。

なお、実際の制度や賃金計算は雇用契約によって異なります。この記事の計算例は求人を比較するための目安であり、個別企業の法的な妥当性を判定するものではありません。

【アドバイザー視点】面談でよくある2つの誤解

キャリアアドバイザーとして日々求人票を見て、求職者の方と面談をしていると、固定残業代について同じ誤解に繰り返し出会います。大きく2つです。

誤解1:「月給30万円」の内訳を見ていない

面談で「月給30万円の求人を見つけました」と言われて内訳を一緒に確認すると、「基本給22万円+固定残業代8万円(45時間分)」だった、ということがよくあります。固定残業代を含む月給は、残業を45時間した場合にはじめて額面どおりの金額です。賞与や退職金が基本給ベースで計算される会社なら、その基準も22万円の方になります。「月給」の数字だけで比較すると、固定残業代なしの月給26万円の求人より条件が良く見えてしまう──これが一番多いつまずきです。

誤解2:「固定残業代=ブラック」という思い込み

逆に、「固定残業代と書いてあるだけで応募をやめる」方も少なくありません。固定残業代は制度そのものが悪いわけではなく、運用次第で社員に有利にも不利にもなります。「固定残業代あり=避ける」で機械的に除外すると、良い求人まで捨てることになります。見るべきは制度の有無ではなく、記載の中身です。

求人票で確認する4項目

固定残業代を除いた基本給

最初に、月給の総額から固定残業代を分けます。

求人月給基本給固定残業代
A社30万円24万円6万円・40時間分
B社28万円28万円なし・残業分は別途支給

表面上はA社の月給が2万円高いですが、基本給はB社の方が4万円高い例です。どちらが有利かは実際の残業時間や賞与の計算方法によって変わります。

賞与や昇給が基本給を基準に計算される会社もあるため、月給だけでなく、基本給がどの程度かを確認してください。各種手当が基本給に含まれるかどうかも会社ごとに異なります。

何時間分で、いくらか

「固定残業代を含む」という記載だけでは比較できません。20時間分なのか、40時間分なのかで、想定されている働き方は大きく異なります。

  • 固定残業代の金額
  • 対象となる時間数
  • 時間外・休日・深夜労働のどれを含むか

固定残業代の金額を時間数で割ると、1時間あたりの金額を大まかに確認できます。ただし、正確な割増賃金は所定労働時間や算入される手当などによって変わるため、単純計算だけで違法かどうかを判断しないでください。内訳が不明な場合は採用担当者へ確認します。

超過分が別途支給されるか

求人票には、固定残業時間を超えた分を追加支給する旨が記載されているか確認します。

月給30万円(基本給24万円、固定残業代6万円・40時間分を含む)。40時間を超える時間外労働分は別途支給。

このように基本給、金額、時間数、超過分が分かれていれば比較しやすくなります。反対に「月給30万円・残業代を含む」としか書かれていない場合は、応募前または面接時に内訳を確認しましょう。

配属予定部署の実際の残業時間

固定残業代が40時間分でも、全員が毎月40時間残業しているとは限りません。反対に「残業は少ない」と説明されても、繁忙期や配属部署では残業が増えることがあります。

会社全体の平均ではなく、できるだけ配属予定部署・同じ職種・直近6か月程度の実績を確認してください。

  • 通常月の平均残業時間
  • 繁忙期の残業時間
  • 最も遅くなる日の退勤時刻
  • 勤怠をどのように記録しているか
  • 固定時間を超えた人がいた場合の精算方法

【記載例】求人票の給与欄3パターンと読み解き方

実際の求人票でよく見かける給与欄の書き方を3パターン再現しました。筆者も求人票を見るときは、まず給与欄に「固定残業代つき」と書かれていないかを確認する習慣にしています。書かれている場合は、次のように読み解きます。

パターン1|内訳が明記されている例

月給28万円(基本給23万円+固定残業代5万円/30時間分)
※30時間を超える時間外労働分は別途追加支給

基本給・時間数・金額・超過分の扱いの4項目がすべて書かれている記載です。この形なら他社と比較しやすく、労務管理への意識がうかがえます。

パターン2|要注意の例

固定残業代の要注意な求人票の記載例(当サイト作成のサンプル)
要注意な記載パターンの例(実在の求人ではなく、ありがちな記載を再現した当サイトのオリジナル図解です)
月給32万円(固定残業代を含む)

金額は大きく見えますが、固定残業代が「何時間分で、いくらか」が書かれていません。仮に45時間分・8万円が含まれていれば基本給は24万円です。このままでは判断できないため、応募前に4項目を問い合わせるか、面接で確認しましょう。

パターン3|情報不足の例

月給25万円〜40万円 ※経験・能力を考慮のうえ決定。固定残業代を含む場合あり

金額の幅が大きく、固定残業代の条件も確定していない記載です。楽観的に上限で考えず、下限の25万円で生活設計を試算し、内訳は面接で必ず確認してください。

「固定残業代45時間」の求人は避けるべきか

45時間分と書かれているだけで、直ちに問題のある求人とは判断できません。ただし、毎月の生活や健康への影響を考えると、実態を詳しく確認したい水準です。

時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。固定残業代の対象時間が45時間だからといって、会社が毎月45時間の残業を自由に命じられるという意味ではありません。また、固定残業時間は「必ずその時間まで残業する」という意味でもありません。

45時間分の固定残業代がある場合は、次の点を追加で確認します。

  • 実際の平均残業時間は何時間か
  • 45時間に設定している理由は何か
  • 繁忙期には45時間を超えることがあるか
  • 固定残業代を除いた基本給は希望額を満たすか
  • 長時間労働を前提とした人員計画になっていないか

むしろ社員に有利なケースもある

固定残業代でも良心的な求人票の記載例(当サイト作成のサンプル)
良心的な記載の例(実在の求人ではなく、ありがちな記載を再現した当サイトのオリジナル図解です)

一方で、固定残業代が社員に有利に働いている会社もあります。見分けるポイントは、残業の「実績」を公表しているかどうかです。

たとえば「固定残業代30時間分を支給・平均残業時間は月12時間」という会社の場合、実際には30時間も残業していなくても、固定残業代は満額支給されます。働いていない18時間分の残業代を受け取っている計算になり、社員にとってはプラスの制度です。残業実績を数字で公表できること自体、労働時間を管理・改善している会社である証拠でもあります。

つまり、固定残業代の求人で本当に見るべきは、残業代の有無ではありません。「平均残業時間」「年間休日」「離職率」「有給取得率」までセットで確認することが、ホワイト企業を見極めるポイントです。年間休日の見方は年間休日105日〜125日の違い、求人票全体のチェックポイントは求人票の読み方で解説しています。

応募前・面接で使える質問例

固定残業代について質問することは、失礼ではありません。働き方と賃金を正しく理解するための確認です。聞きにくい場合は「入社後の認識違いを防ぐため」と目的を添えましょう。

給与の内訳を確認する

求人票の月給について、基本給、固定残業代、その他手当の内訳を教えていただけますでしょうか。

実際の残業時間を確認する

配属予定部署の働き方を具体的に理解したいため、通常月と繁忙期の平均残業時間を教えていただけますでしょうか。

超過分の支払いを確認する

固定残業時間を超えた場合の申請方法と、給与明細上での支給方法を教えていただけますでしょうか。

固定時間を設定した理由を確認する

固定残業代が40時間分に設定されていますが、実際の残業実績との関係や、この時間数を設定されている理由を教えていただけますでしょうか。

転職エージェント経由の場合は、企業へ直接聞く前に担当者へ確認してもらう方法もあります。面談で確認したい項目は、転職エージェント面談の準備と質問でも整理しています。

質問したときの企業の反応にも注目する

質問への「答えの内容」と同じくらい、「答え方」にも情報があります。筆者が面接や面談で残業時間や給与の内訳を質問した際、「そんなこと聞くの?だいたいわかるでしょ」と言いたげな曖昧な反応をされた企業がありました。

誠実な回答の例:「固定残業は30時間分です。超過した分は1分単位で別途支給します。先月の配属予定部署の平均残業は22時間でした」——数字で即答できるのは、労働時間が実際に管理されている証拠です。

警戒したい回答の例:「まあ、そんなに残業はないですよ」「そのあたりは入ってみればわかります」——数字が出てこない、説明を面倒がる、質問自体に嫌な顔をする。こうした反応の企業は、入社後の残業管理や超過分の支払いも曖昧である可能性があります。

質問して嫌な顔をされたら、それ自体がひとつの判断材料です。給与や労働時間の確認は応募者の正当な権利であり、遠慮する必要はありません。

内定後は求人票と労働条件通知書を照合する

応募時の求人票だけで最終判断をせず、内定後に提示される労働条件通知書や雇用契約書と照合します。

確認項目求人票内定時の書面
基本給金額を記録同じか確認
固定残業代金額・時間数対象労働と超過分も確認
試用期間期間と条件給与が下がらないか確認
賞与・昇給有無と実績算定基準を確認
勤務時間始業・終業時刻休憩・残業・制度を確認

内容が違っている場合は、承諾前に変更理由を確認してください。内定を承諾するか迷うときは、内定先を100点で比較する判断表も利用できます。

内定をもらったあと、承諾するか迷う場合の判断手順は「転職の内定を承諾するか迷うときの判断方法|比較表と確認項目」にまとめています。

固定残業代の求人を判断する比較表

状態判断の目安
比較しやすい基本給、金額、時間数、超過分が明記され、実際の残業実績も説明される
追加確認が必要記載はあるが、配属部署の実績や賞与の算定基準が分からない
慎重に検討内訳が曖昧、質問への回答が変わる、超過分の説明がない、求人票と書面が異なる

固定残業代がない会社でも、残業が多い場合はあります。反対に、固定残業代があっても残業管理が明確で、実際の残業が少ない会社もあります。制度名ではなく、数字と運用を確認しましょう。

求人を比較するときは、給与だけでなく、仕事内容、休日、勤務地、試用期間も同じ表にまとめると判断しやすくなります。詳しくは求人を比較する7つの確認ポイントをご覧ください。

説明と実態が違うときの対応

入社前に求人票と労働条件通知書が異なることに気づいた場合は、メールなど記録が残る方法で採用担当者へ確認します。転職エージェントやハローワークを利用した求人であれば、担当窓口にも相談してください。

入社後に、説明されていた賃金や残業代の扱いと実際が異なる場合は、求人票、労働条件通知書、雇用契約書、給与明細、勤怠記録を保管します。個別の労働問題は、都道府県労働局や労働基準監督署などに設置されている総合労働相談コーナーへ相談できます。

筆者の体験談|求人票と面接で確認して感じたこと

面接で内訳を質問したら、曖昧な反応をされた

筆者はその企業に入社には至りませんでしたが、面接や面談で残業時間や給与の内訳を質問した経験が何度かあります。ある企業では「だいたいわかるでしょ」という態度で、具体的な数字は最後まで出てきませんでした。当時は少し気まずさを感じましたが、いま振り返ると、その反応自体が「この会社は労働時間を説明できない」という貴重な情報でした。

求人票より残業が長く、超過分は支払われなかった

別の職場では、求人票の想定より実際の残業がはるかに長く、超過分の支払いもありませんでした。「求人票と実態が違う」ことは、残念ながら実際に起こります。この経験から、入社前に超過分の支払いルールを確認すること、内定後に労働条件通知書と求人票を照合することの重要性を痛感しています。

今は「固定残業代つき」の記載をまず確認している

こうした経験を経て、いまは求人票の給与欄を見るとき、最初に「固定残業代つき」と書かれていないかを確認しています。書かれていれば月給を基本給と固定残業代に分解し、時給換算してから他社と比較する——この一手間で、金額の見かけに惑わされることがなくなりました。

よくある質問

固定残業代がある求人は違法ですか?

固定残業代という制度自体が直ちに違法というわけではありません。通常の賃金と固定残業代を区別でき、対象時間を超えた分が追加支給されるなど、適切な運用が必要です。

残業がゼロでも固定残業代は支給されますか?

一般には、雇用契約で定められた固定額として支給される仕組みです。ただし、欠勤時の控除など個別の賃金規程によって扱いが異なるため、労働条件通知書や給与規程を確認してください。

固定残業代が高ければ得ですか?

金額だけでは判断できません。基本給が低く設定されている場合や、実際の残業時間が長い場合もあります。基本給、対象時間、実残業、賞与の算定方法を合わせて比較してください。

応募前のチェックリスト

  • 月給と基本給を分けて確認した
  • 固定残業代の金額を確認した
  • 何時間分か確認した
  • 対象となる労働の種類を確認した
  • 超過分が別途支給されると記載されている
  • 配属予定部署の平均残業時間を確認した
  • 繁忙期の働き方を確認した
  • 試用期間中の給与を確認した
  • 賞与・昇給の算定基準を確認した
  • 求人票と内定時の書面を照合した

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使い方はシート内の「使い方」タブに記載しています。黄色いセルに求人票の数字を入力するだけで、下の計算結果が自動で更新されます。

まとめ|月給を分解してから判断する

固定残業代の求人を見つけたら、制度名だけで避けたり、月給の高さだけで選んだりしないことが大切です。

基本給、対象時間、超過分、実際の残業時間の4項目に分解すれば、他社や現職と比較しやすくなります。分からない項目は、応募前・面接・内定後のいずれかで必ず確認し、納得できる条件かを判断してください。

PR求人票の給与欄だけでは判断がつかないときは、転職エージェントの担当者に残業の実態を確認してもらうという方法もあります。

参考資料

監修・執筆者
運営者K(現役キャリアアドバイザー)

自動車業界で設計職として勤務後、40歳(2020年)に人材業界へ異業種転職。現在はキャリアアドバイザーとして転職支援の現場に携わる。「支援する側」と「40代で転職した当事者」の両方の視点から、30代・40代の転職で迷いやすい判断を、実体験と公的データで整理して発信しています。記事内のExcelテンプレートはすべて当サイトのオリジナルです。

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